運命とは、つくるものらしいです。

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「うーん、そうだな……100個は言えるかな」 「じゃあ、言ってみてください」 絶対嘘。 たぶん顔に書いてあったんだろう、わたしの顔を見て彼はふっと笑みをひとつ落とす。 「じゃあ、一つめ。名前は野々村ひなの」 「…………」 「二つめ、25歳」 「…………」 「三つめ、ひかり製薬の総務部に勤めてて、今年で4年目」 「…………」 そんなの同じ部の人だったら、全員知ってる。 違う。そういうことじゃない。 みんなが知っていることでも、友達が知っていることでもなくて、わたしが本当に聞きたいのは―― 口を開く。 “そういうことじゃないんです” そう言おうとしたけれど、彼が先に四つめ以降を続けて、わたしは永遠にその機会を失った。 「9月2日生まれ。乙女座。O型。身長157.1センチ。体重は42.8キロ……あ、でも、最近ちょっと太ったよね? これは去年の健康診断の時のデータだから、今は44キロくらいかな? 足のサイズは23センチ。家族構成は、父親と母親の三人家族。飼い犬の名前は、大福。豆柴。千葉県出身で、大学進学から東京(こっち)。中学の時から国語と音楽は得意だけど、英語と数学が苦手。中高と吹奏楽部で、大学では文芸サークルに所属していた。趣味は少女マンガを読むことと雑貨屋めぐり。特技はクラリネットと漢字。資格は普通自動車免許と医療事務と漢検準一級。好きな食べ物はお寿司で、嫌いな食べ物はかんぴょう。テレビはドラマ専門で、好きな芸能人は福士蒼汰。ドラマも映画も小説も恋愛ものが好き。好きなアーティストはback numberと西野カナ。好きな洋服のブランドはReneで、よく使っている化粧品はJILLSTUART。香水はGUCCIのLUSH。好きな色はピンク。だけど、よく着る色は白。好きな男のタイプは優しい人……って言ってるけど、本当は経済力があって、仕事が出来て、顔がよくて、少女マンガに出てくるような完璧な王子様みたいな人、だよね?」 王子様みたいな彼は、極上の笑顔でわたしでそう問いかける。 だけど、特に答えは求めていなかったらしい。薄いキレイな唇は、またすぐに開かれる。 つらつらと並べられるそれは、まるで歌っているようにリズミカルだ。
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