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「…そんなに拒むならべつに良いよ。…それより、このピアノさっき弾いてて音が変だった。調律しようかなぁー?」
そう言って二本目のタバコを灰皿に擦り付けると、彩蝶は工具を取りに店の倉庫へ行った。
「………、まさかあんな事があって別居してるなんて……イロには言えやしないよ…。」
天箜の独り言は静まり返った店に消え失せる。
何も知らない彩蝶は工具一式を手に戻ると、工具を片手に鍵盤を叩きながらピアノに頭を突っ込んだ。
ふと、天箜が時計を見ると午後の五時を示していた。
「…おや?」
時計の下にある店の窓の外を見ると、何やら用紙を手にしながら店の看板を何度も見ている女の子の姿があった。
タ~ン、タ~ン…タッタッタッ、タ~ン…。
彩蝶はそれには気付かず、ピアノの調律をしている。
カラランッ…
店のドアが開き、その子は入って来た。工具を片手にピアノに頭を突っ込んでいる彩蝶が気になるのか、その子は口を半開きにして見入っている。
「いらっしゃい。」
「こんにちは、天箜さん。早く来すぎてしまいました。」
「そのようだね。なら、好きな席に座って待ってるといいよ。」
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