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突然のことに、天箜は手にしていたヴァイオリンを落としそうになった。
「あたくしぃ〜?イロちゃんがピアノ弾いてるあたりからずっと居たわよぉ〜」
「オカンっ!!気配消すのやめてちょーだいっ!…それと、『ボーイフレンド』の部分だけ発音良く言うなっ!こっちはうつつを抜かすような恋話をしてるわけじゃないのっ!!」
彩蝶は曲羽に一喝した。
「はいはい。分かってますよ〜。偽りの神の話でしょう〜?よぉ〜く存じ上げておりますっ。」
「えっ…、母さん、偽りの神について何か知ってるの?」
「知ってるも何も、偽りの神を天上界の牢獄にぶち込んだのはパパだものぉ〜。」
「えぇっっ!?グランパがぁ!?」
彩蝶は、信じられないと言わんばかりに目と口を開けたまま閉じられずにいた。
「あの温厚な性格のお祖父様がねぇ……誰かを捉えているところなんて、想像がつかないね…。」
天箜も珍しく険しい顔をして驚いた。
「そうよぉ〜?もう何千年も前になるかしらぁ…。妖の頂点に立つ仏陀様、第六天魔王様、イエス様、シヴァ様、ブラフマー様、ヴィシュヌ様、ドゥルガー様…そして、サン=ジェルマン伯爵ことあたくしのパパ。この八人が集まる度、ある厄介な神の話をしていた。…それが偽りの神。」
曲羽の話に耳を傾けながら、二本目のタバコに火をつけた彩蝶は怪訝そうな顔をして言った。
「でも、おっかしいでしょっ?その偽りの神の称号をどこぞの常妖に与えたのはその八人でしょう?」
「イロちゃん、それは違うわ。偽りの神は元々、パパと同じ創世記から居る頂点に立つ妖だったのよ。」
「はぁーーっっ?!!」
「俺もそれは初耳だなぁ…。」
「あらぁ〜…、二人とも知らなかったのねぇ?」
曲羽の話を聞いて、彩蝶は自分に捉えるよう沙汰を出した二人の顔を思い浮かべて怒りを込み上げていた。
「クッソ…、珍しくニヤニヤしながら頼んできたと思ったら……あのパンチパーマとドレッドヘアーに騙された……。そんな奴、敵いっこないっ!!」
彩蝶は怒りに身を任せ一言吠えると、タバコの煙を鼻から勢いよく出した。
「イロ…、仏陀様とイエス様をそんな呼び方をするものじゃないよ。……それで母さん、その八人は偽りの神について何を話し合っていたの?」
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