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☆
教室に戻って来た俺は、自分の席に座り、ケータイを開く。ケータイ小説を読むためだ。
机には落書きの後がまだ残っていた。チョークで書かれたものだから、すぐに消える。問題ない。
俺は画面に映る文字列を眺める。駄目だ。集中できない。
生徒たちが騒ぐ声に、無性にイライラする。先生が戻ってくるまでの間はこのうるささが続くのか。どのみち先生が来たらケータイ小説は見られない、か。俺はケータイをぱたんと閉じた。
「はあ」
ため息を吐いて、机に突っ伏す。
騒ぎ声の中に混じって、二宮と、その友人の女子二人の声が聞こえた。
「彩華すごいね、読書感想文」
「まあ、頑張ったからね」
「あー。いいよなあ。やればできる子は。あたしこの間のテスト、C判定だった」
「わたしもー。彩華は?」
「え、えーっと……A判定」
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