一話目

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一話目

 「おはよー、ねぇ昨日のドラマ見た?あれ やばくない!?めっちゃすごかった!」  「8時からのやつでしょー、昨日めっちゃ 宿題してて見れなかったから録画した!もう 超楽しみ!」  斜め前の席で、女子達がきゃいきゃいと 話している。話の主題になっているドラマは イケメン俳優が出ていることが話題になった 今期の人気ドラマのことだろう。  というかよくもまあ毎日おんなじ話題で 盛り上がれるものだ。覚えている限りその 話題三回目だぞ、毎回そんなに話すこと あるのだろうか。  話の内容をそれとなく聞いていると、 ガタガタと音がして二人が立ち上がる。 一緒にトイレに行くらしい。これも毎回。 ドアに行くまでの道程には私の机がある為、 目を合わせないように俯きつつ過ごす。  …ガタッ。  「あ、ごめんね。」  「…うん。」  衝撃でズレた机を直す。ほぼ毎回起こる やりとりだが、もう慣れてしまった。  一人が私の机にぶつかり、トイレまたは 廊下などで「菌がうつったー!」と笑う。  いや何の菌だよ超健康だわ。定期検診 一度もひっかかったことないんですけど。  本人に言えないことを脳内でブツブツと 呟いていると、もうすぐチャイムが鳴る 時刻であることに気づく。  あーあ、間に合わないぞあの二人。  私には関係ないけど、と語尾に付け加え、 さっさと一時間目の授業の準備を始める。 一時間目は国語だ。ワークの宿題提出の 用意の方がよほど大切だろう。
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