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第一章
昔の話は正直信じていない。
証拠物品はやろうと思えば作れるし、話には尾びれ背びれがつく。
教訓や戒めも同じことだ。
1
「気を付けてね。」
両親に見送られた後、僕はこうして二時間ほど電車に乗っている。
長期休みに祖父の家に行くのは毎年恒例だ。しかし、今年は両親の仕事の都合で僕だけ一足先に向かうことになった。
駅に到着し、車で迎えに来てくれた祖父に軽く挨拶をする。車の助手席に座って持ってきたお菓子を渡した。……家で渡せばよかったかもしれない。それでも祖父はそのしわくちゃな顔を益々しわしわに笑って見せた。
「大きくなったな。」
わしゃわしゃと僕の頭を撫でる手は相変わらず大きく感じる。祖父は撫でるのをやめ、ハンドルに手をのばした。
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