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二階の探索はあまり良い結果を見つける事は出来なかった。日記の一つでもあればと思ったけれどそんな都合よく情報は落ちていない。
「パソコンがない」
少し経ってからケイが言った。
「持っていない、とか?」
「印刷機器はあるのにパソコンは無いの? 繋ぐコードもあるし、パソコンを一台置くのにちょうどいいスペースがあるわ」
ケイは机の上に手を置きながら続ける。確かに机の窓なりにある小机にプリンターが置かれておりパソコンに繋ぐ優先は机の上に伸びたままだ。
「パソコンを持って逃げたのかも」
「行動範囲が極端に狭いホムンクルスを置いておくかしら……。でも、そうとも考えられるわね」
机の引き出しの中に、目ぼしい物は無かった。
それでも少ない本棚にケイの興味をそそられる物があったのだろう。
彼女はまるで家主のようにその本を抜き出すと、持参したバックへしまっていく。あまりにも堂々とそんな事をしているが盗用で犯罪行為だ。
咎めようとした僕に彼女は未来を先に見ていたのだろう。キッと僕を睨みつけながら本を仕舞う。
「それは泥棒だよ」
「見つかりもしない家主と口もきけないホムンクルスに了承を得るべきかしら? それとも犯罪行為だとするなら、あなたは不法侵入及び強盗のそれね」
僕がそんなに憎いのだろうかと思わせる程、彼女は攻撃的にそう言いつけると五冊目の本に手を伸ばした。先程までの穏やかな彼女とはまるで違う、その豹変ぶりに僕は何も言い返せなかった。
ケイはペラペラと紙を捲っていたが、ふと動きを止める。
「どうしたの?」
僕は尋ねながら恐る恐る覗き込む。どうやら厚めの本はアルバムらしい。ホムンクルスに酷似した女性と優しい顔をした男性の写真があった。
アルバムは何度も見られていたのか、それとも扱いが乱雑だったのか表紙は汚れ写真には指紋が幾つも見えた。汚れたアルバムは覗いて、写真はとても幸せそうなものに見える。
お腹には赤ん坊もいたのだろう。腹の大きい女性の写真の下には妊娠六ヶ月目とその幸せが綴られていた。けれど、そのアルバムは途中から白紙になっていた。
ヒラリと、アルバムから紙が落ち拾い上げれば「魔女紹介」という名刺である。後ろには乱雑な、筆記体にも思える字体で金額と指定場所、そしてホムンクルス、そう書かれていた。
「君たちに相談したわけか」
「紹介したのは意地の悪い魔女でね。『どうせ出来ないだろう』とバカにしながらホムンクルスを教えたの。私はそれの尻ぬぐいに来た」
「その魔女は?」
「今は謹慎処分中。こんな状況では、追加処分があるでしょうね」
きっと連絡しているのだろう。携帯電話を弄りながらケイは答える。あまりにも真面目に文章を打ち込んでいるからだろうか話さなくても良い事を話しているように感じた。
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