9人が本棚に入れています
本棚に追加
最終章
春。
あれから僕は、あのような恐ろしい出来事にはあっていない。
あの後、両親からとても怒られ、外出禁止条例が出された。それだけではない、カウンセリングの回数も増えた。それに加えて両親や親戚は、僕に対して少し神経質になった。けれど、それは心配してくれるが故の仕方ない事だ。と、そう割り切れるようになったのはつい最近の事だ。
二回。僕が体験した出来事は、まだ悪夢として出てくる事が多い。その度に飛び起きて、ここは自分の家だと何度も自分に言い聞かせている。けれど、たとえホムンクルスの友人でも「いいよ」と許してくれたのは心の救いだった。
ケイ――……。アマギ・ホタルとの再会は出来ていない。
本名こそ教えてくれたが、彼女が所属するという魔女会の連絡先さえも僕はついぞ知りえなかった。
またあのような出来事に巻き込まれれば彼女に会えるのかもしれない。けれど、心配してくれる両親や親せき、友達を見れば優先すべきは自ずと決まっていた。
「ホタル、あまり離れるなよ」
家族の買い物途中、そんな声が聞こえて僕は立ち止まった。
慌てて声の主を探せば、そこには、荷物を大量に持った白髪の男性とまぎれもないケイの姿があった。
ケイは未来を見て識っているのだろう、明らかに僕を見ると一瞬だけ笑みをこぼした。僕が声をかけるよりも先に、彼女たちは人ごみに消され、そしてすぐに居なくなってしまった。
「どうしたの?」
不思議そうに尋ねる母親に僕は「何でもない」と返す。母親は不思議そうに、少し心配げに僕を見ていたけれど納得したのだろう。そうして僕は歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!