え、なんで。

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ピンポーン、と軽快な音がして、今日もきやがったなと思いつつ玄関を開ける。 「はーるちゃーん!おはなし、しーまーしょー!」 「あー、はいはい。どうでもいい話だったら殺す。」 あはは、ひどーい。とか、言いながらづかづか俺ん家に上がり込む。 「…で?はなしって?」 「あ、うん!高校の話!」 中3の夏休みだったその頃最も多く話題に上がる内容だった。しかし、こうも家まで来て改まってするようなことか?と、疑問に思いつつとりあえず話を聞く。 かずきの話はこういうものだった。 まず、王道学園という、全寮制の、平民には知られない、それくらい上級者(?)が集まる高校があるということ。そこには普通の高校では考えられないような、システムがわんさかあること。そしてそのシステムの中に、ある条件が揃えば両部屋が1人になるということ。しかも一部屋相当でかい。(パンフ見た) そこに俺は食いついた。 俺は下に1人弟がいるだけで、決して「兄弟多くて1人部屋憧れちゃうな」的な可哀想な奴ではない。1人部屋に今日にをそそられたんではなく。人に立ち入られない俺だけの空間が手に入る、という所に魅力を感じたのだ。 というのも、俺には趣味があり、その趣味というのが、所謂2次元のキャラクターグッズを集めたり、そのキャラの同人誌を読み漁ったりすることである。ひとつ言いたいのが俺はアニメオタクじゃない。あえて言うならアノンちゃんオタクだ。アノンちゃんてのが俺の嫁。 で、そのアノンちゃんグッズを集めるのはいいのだが、飾れないのだ。お部屋に。なぜかと言うと、両親が何かとこういうのに否定的だから。 まぁ、1回バレて捨てられてしまえば、怖くて出来ないこともあるだろう。あの、アノンちゃん捨てられる瞬間ね。おれしんだわ。 とにかくそういうことがあって、広くて、自分の完全なる個人スペースが欲しかったわけ。 その大部屋1人になる条件は試験は必ず5位以内。身体能力試験も5位以内。というものであった。 俺は頭の出来がいいし運動もできる天才だと自負していたから、よゆーだと思った。かずきの話を聞くまでは。 「でねでね?オレもこの学校入りたくてぇ、で、生徒会に入りたいのよ。んー、入りたいってか父さんのめーれーなんだけど…」 こいつ家はかなりの金持ちである。あと教育熱心。 「でもぉ、生徒会って一人一人にしんえーたいって言うのが出来るらしいのね?で、そのたいちょーをはるちゃんにやって欲しーなーって思って、この話持ってきたんだけどどう?」 迷いはしたが、俺の得られるモノに比べれば大したことではないと思って、 「あ?いーよいーよ、よゆーっしょ。」 と、軽々しく返事をしてしまったわけ。 「え?ほんと?やったぁ!あ、ちなみに1度親衛隊長になった人は問題起こしたりするとそれまで持ってた特典取られちゃうから!」 …は? 「は?…え、おまえそれ、」 「はるちゃんやるって言ったよね!男に二言はないんだよね!ね?」 こいつ、変なとこ頭回りやがる俺より成績悪いくせに。生意気。 「よっし!じゃーけーやくせーりつ!」 「契約?」 「うん!はるちゃんはオレのたいちょーになること!オレははるちゃんのへいわを守ること!で、せーやく!」 そんなアホな契約を無理やり取り付けらたが、にぱにぱ笑ってるこいつを見てると妙に絆された。
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