三毛と伝之助の出逢い

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 で、ネズミ退治に励む一方、吾輩は猫であるの猫張りに人間観察にも励んだ。 「伝之助は若旦那で色男で好色一代男で人使いも金遣いも荒くて湯水の如く乱費するにゃあ。吾輩の餌も態々魚河岸へ丁稚をやり、刺身や寿司にするような鮮魚を仕入れさせ、丁寧に柵取りさせ、お作りにしたりする上におやつに鰹節をくれたり木天蓼をくれたりとまあ歓心を買おうと吾輩に媚びるに吝かでなく気味が悪い程、親切にするにゃあ。けれども、そこに誠意なぞというものはなく長者の万灯より貧者の一灯で今迄で権兵衛の施しに勝るものはなかったにゃあ。」  そう思った三毛は御馳走には喜んで与るものの伝之助に褒美を取らす気が薬にしたくもなくなってしもうた。
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