三毛と権兵衛の出逢い

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 或る日も三毛は人家に入ってはネズミを捕って見せておると、矢張りネズミが繁殖して困っておる権兵衛という大工に拾われて飼われることになった。  そうして何日かして三毛がネズミをすっかり退治すると、権兵衛は三毛に言った。 「本当に助かったぜ。おめえは一等、役に立つ可愛い猫だ。だから、これからも飼ってやらあな。」  権兵衛は病身の親を抱え、貧窮する身の上で而も三毛が薄汚い猫にも拘らず、自身の言葉通り、三毛を可愛がって飼い続けたものじゃから三毛はこの人は他の人間とは違うにゃあ、この人は優しい人だにゃあと鑑定すると、権兵衛と隅田川沿いを散歩している時、驚くことに威厳を持った人間のように日本語で喋り出した。
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