権兵衛と伝之助の出逢い

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 権兵衛と伝之助の出逢い

 権兵衛は富くじが当たったと言って大工仲間や自分が住まう裏長屋の住人に金を分けてやり、皆が皆、滞納していた家賃を清算することが出来、自身は棟梁を始め同僚の協力を得て江戸郊外に屋敷を建てた。  或る晩、権兵衛は自分の屋敷の座敷で大工仲間4人と富を目当てに新たに仲間に加わった伝之助という商人とで盃を酌み交わしておった。  この伝之助、堺に本店を置く豪商の御曹司で江戸の呉服店にて番頭を務めておるのじゃが、これが吉原に通いたいが為に江戸に移った相当な遊興好きで本多髷に結い絹物の小紋を着て南蛮の名物裂の袋に銀無垢の煙管を携え、その出で立ち通り粋人であるものの放蕩息子に違いなく酒が矢鱈に強い。じゃから権兵衛は大工仲間が皆、泥酔状態になって寝てしまったり譫言を言ったりする中で伝之助と一対一で酒を飲みがてら話すことになった。
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