第七章 焦燥感と爽快感

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「はぁ…本当なんでこんなに綺麗なの…信じられないよ…ん、んっ」 「…綺麗なんかじゃない」 「……」 「わたしはとっくに汚れきっている」 「…それってオレに散々弄ばれているからって意味で?」 「……違う」 「そうなの?オレ、大概自覚あるよ。こんな美人な女子高生をオレなんかが穢しちゃって悪いなぁって」 「あんたは悪くないわ。わたしが望んだことだもの」 「……」 「だからいいの──早くそれ、挿入れて」 「…りょーかい」 わたしの上でガンガンと腰を振っているこの男は自称カメラマンの東雲勇(しののめいさむ)。通称、サム。わたしより10歳上の27歳。 彼との付き合いはわたしが高校に入った年から始まった。 出逢いはナンパだった。街でいきなり『写真、撮らせてください』といわれたのがきっかけだ。いつもならそんな誘いは一蹴するのだけれど何故か彼の求めには応えようと思った。 それは彼が女装をしていたからだ。背が高く、声も低い。喉仏があるから中身は絶対に男なのだ。だけど彼の見かけはどうしても女にしか見えなかった。 『女装、趣味なんだけど中身はれっきとした男だよ?』 そんな彼のギャップに興味深かったということもあってわたしは彼の被写体になる事を承知した。 最初の頃はただ色んな処に出かけてひたすら写真を撮るという付き合いだった。 プロのカメラマンになるために今はとあるプロカメラマンに弟子入りしていて雑用をこなしている身だといった。何度もコンクールに出展しても落選してプロへの道は中々厳しいと笑いながら愚痴っていた。 だから一度冗談っぽく『わたしの写真を送れば引っかかるかも知れないわよ』といったら酷く怒られた。 『君の写真はオレだけのものだ』 見たこともない真顔でそういわれた時、わたしの中で彼に対しての気持ちが変化して行った。 そうして深い関係になったのはごく最近のことだった。
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