第八章 初体験

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「……ぇ」 「…ごめん」 「し、忍…?」 忍は私の中からモノを抜いていた。 「これ以上、ちとせを泣かせたくない」 「……」 「今日はここまでにしよう」 「! そんな…っ」 忍の言葉に驚きつつも心の奥底では少しホッとした気持ちが湧いてしまった。 「俺はちとせが痛がって泣いて…それでも無理矢理続けるなんて出来ない」 「……」 「ちとせが大切だから。ちとせが俺を受け入れてくれるまで待つよ」 「…忍」 「無理させてごめん」 「……」 忍は私を優しく抱きしめてくれた。 抱き締められながら私は酷いことをしてしまったと思った。好きな人から受ける行為ならどんな痛みを伴っても耐えられるのだと思っていた私はそれが出来なかったことがショックだった。 だけど忍の優しい対応で罪悪感はほんの少しだけ和らいだ。 「ちとせ、お風呂、もう一度入って──」 「好き」 「え」 私は忍の言葉を遮ってギュッと抱きしめ返す。 「私…忍のことが大好き」 「……」 「優しい忍が好き…だから…嫌いにならないで」 「…ならないよ」 忍も私をギュッと抱きしめてくれた。 「セックス出来なかったくらいで嫌いになるような惚れ方していない」 「…忍」 「ちとせが俺のことを本当の意味で受け入れてくれるまで待つから」 「…え」 (本当の意味で…受け入れる?) 忍がいった言葉の意味がよく分からなかった。だって私はもうとっくに忍のことを全て受け入れているのだから。 (…なんだろう、この感じ) ──それが私の中に嫌な不安が小さく芽生えた瞬間だった
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