第九章 凌辱

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(武流くんとこんな風に喋るのいつ以来かな) そんなに時間は経っていないはずなのに何故か武流くんと笑い合いながらお喋りするのが随分久しぶりのような気がした。 「はい、どうぞ」 「わぁ、美味しそう。いただきます」 簡単な朝食を作って武流くんに出した。 「相変わらずちぃは手際がいいね」 「まぁ昔からやっているから。といってもたかが玉子焼きとかウインナー炒めたり、本当に簡単なものばかりだよ」 「それでも美味しいし嬉しいよ」 「……」 武流くんの目が細められ極上の微笑みを返された。 (はぁ…やっぱり武流くんって王子様だなぁ) 見かけがそのまま私がイメージする王子様だ。それは昔、初めて武流くんを見た時から変わらなくて…… (ふふっ、でも王子様がお箸持ってお新香食べているのってやっぱり不思議) 見慣れている風景なのにいつも武流くんのその姿は新鮮に映った。 「…ちぃ」 「ん?」 「そんなにジッと見られると食べにくいよ」 「あ…ご、ごめんね。つい武流くんに見惚れちゃって」 「っ、見惚れてって」 「武流くんって本当、昔からずっと変わらないね」 「……それ、どういう意味」 「え」 ほんの少し武流くんの声のトーンが低くなり表情から笑みが消えていた。
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