第九章 凌辱

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「昔から変わらないって、どういう意味」 「あ…あのね、変な意味じゃないよ?武流くんは昔から私の中では王子様ってイメージで、それが変わらないっていう意味で…」 「……」 「ほら、よくあるじゃない?小さい時は可愛い男の子も大きくなるにつれて男々しちゃってなんだか変わっちゃったっていうこと」 「……」 「そういう意味では武流くんは小さい時の可愛い感じが大きくなるにつれてカッコよく成長したってい、う……」 「……」 (武流…くん?) 少しずつ空気が冷える感じがした。私が喋れば喋る程に武流くんの顔から表情が無くなって行くのが窺える。 「た、武流くん?あの…私、何か悪いこと、いっちゃった?」 恐る恐る武流くんの様子を窺う。すると武流くんは持っていた箸を置き、真っ直ぐに私を見た。 「ねぇ、僕はちぃの中でどういう存在なの?」 「えっ」 突然発せられた言葉の意味に思わず固まってしまう。その言葉、そして声が今までの武流くんのそれとは全く違っていて…… (もしかして武流くん、怒っている?) 武流くんの声は静かだった。だけどその静けさの中にとても熱いものが含まれているような気がした。 「ねぇ、答えて」 「ど、どういうって…武流くんは私にとって王子様で…」 「ちぃにとって王子ってどういう存在なの」 「え」 「僕はちぃにとって王子って存在で、それはちぃにとってはどれくらいの存在なの」 「…何…武流くん」 「……」 「武流くんのいっていることが…よく分からないよ」 武流くんの視線が真っ直ぐに私に注がれ身動きが出来なかった。
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