第九章 凌辱

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いきなり武流くんが何に対してこんなことをいい出したのか分からなくて頭が混乱していた。 「分からない、ね。じゃあ分かり易く訊くよ」 「……」 「ちぃにとって僕と小ノ澤、どちらがより強くちぃの心の中に存在しているの」 「!」 (な、何…) 「どっち」 「ちょ、ちょっと待って武流くん、その質問こそよく分からない」 「……」 「どうして此処で忍が出て来るの?」 「──忍?」 「あっ…!」 (ついいつもの呼び方で) 「忍……忍……ね」 「あ、あの…」 「そういえば付き合っているんだよね、ちぃは小ノ澤と」 「……」 「付き合っているから……家にだって泊めちゃうよね」 「!」 「凄いよね、まさかちぃがそんなに積極的だったとは僕、知らなかった」 「…な、なんで」 「何が」 「なんで…武流くんが忍を家に泊めたってこと、知って…」 「そんなの簡単だよ。だってずっと見ていたから」 「え」 「ちぃが小ノ澤と一緒に家に帰宅した時からずっと…ずっと家を見張っていたんだから」 「?!」 「だけどいつまで経っても出てこない。何時間も何時間も…終いには家の電気が消えてしまった」 「……」 「そっか、小ノ澤は泊まって行くんだなってそれで分かった」 「…たけ、る…くん」 武流くんが私の知らない顔を見せている。それが衝撃的過ぎて頭の中には武流くんの言葉が何も入って来てはいなかった。
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