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武流くんの様子がいつもとは違っていた。──ううん、違うんじゃない
(こんな武流くん、見たことない)
「…ちぃ」
「……」
「何?どうしたの、なんでそんな顔しているの」
「…た、たけ」
「……」
「武流…くんこそ…なんでそんな…」
絞り出さないと出てこない言葉。武流くんに対して抱いたことのない畏怖の感情が私の心を不安色に染めている。
「怖がらないでよ、ちぃ。僕はちぃに酷いことはしないよ」
「……」
「ただ、知って欲しいんだ」
「…なに…を」
「僕はちぃが好きだってこと」
「……」
「僕にとってちぃは大好きで大事な女の子なんだ」
「……うん、ありがとう」
「え」
「私も…武流くんのことが好きだよ」
「……」
「武流くんは私にとって大切で大好きな男の子だよ」
「……」
それは心からの言葉だった。昔から今も、私にとって武流くんは大切な存在だった。
──それこそ冴ちゃんと同じくらいに
「武流くん…」
ほんの少しいつもの武流くんに戻ったかなと安堵していた私は突然武流くんにガッと腕を掴まれた。
「!」
強い力でグイッと引っ張られ、私はそのまま武流くんに力任せにキッチンから出された。
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