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(…って、ちとせのこれは僕に対しては何の意味もないんだから)
少し冷静になって頭を冷やした。
「行こう、ちぃ」
「うん、おばあちゃんおやすみなさい」
「はいはい、おやすみね」
ちとせは僕の祖母が大好きだ。祖母もちとせをもうひとりの孫のように可愛がっているところがあった。
ちとせの家は母子家庭で仕事で忙しいおばさんの代わりに祖母が僕と一緒にちとせのことも可愛がって来たのでそこには濃い繋がりがあった。
「武流、ちとせちゃん彼女になってくれたかい?」
「ブッ」
自宅から徒歩3分の処にある家までちとせを送って行き、帰って祖母と夕飯を食べているといきなりいわれた。
「味噌汁こぼしたよ。だらしないね」
「ば、ばあちゃんが変なことを言うから…!何、突然」
「その顏はまだだね。…はぁ、なんだい意気地なしだね」
「ばあちゃん!」
「見てくれはいいのに存外役に立たないもんだね、ここぞという行動力のなさ、一体誰に似たんだい」
「…少なくとも母さんじゃないね」
「そうだね、父方の遺伝子だ、そのヘタレな性格は」
「~~~」
祖母は小さな時から僕とちとせを見守って世話をして来た勘で、ちとせのことが好きだという僕の気持ちを随分早い段階で気付いていた。
祖母はお気に入りのちとせが孫の僕とくっつくことを望んでいるようで、事ある毎に僕にあれこれ訊いて来る。
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