第十二章 始まりの一日

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カシャッ 「!」 「土下座画像、もらった」 「…泉水」 「本当はわたしが此処に来たのはちぃからの伝言を伝えるためよ」 「──え」 「『約束、忘れていないよね。待っているから』」 「……」 「それだけ。じゃあね」 「! ちょ、ちょっと待て、泉水」 僕は思わず泉水の腕を掴んだ。 「何よ、わたしまで襲う気?」 「バッ、馬鹿、恐ろしいことをいうな!違う、ちぃは…ちとせは僕と逢ってくれるのか?!」 「……」 「あんなに酷いことをした僕に…」 「そんなこと知らない。ちぃが何を考えているのかなんてわたしは知らない。ただわたしは頼まれたから来ただけ」 「……」 「そんな伝言をしてもちぃは来ないかも知れない」 「!」 「それにもしかしたら小ノ澤を連れてあんたに復讐するために行くのかも知れない」 「……」 「兎に角伝えたから。──まぁ、行くか行かないかもあんたの自由だけれど」 その言葉を最後に泉水は家から出て行った。 (……約束) 『武流くん、13時に現地集合だよ』 ちとせからそういわれたことがもう随分遠い昔のことのような気がする。 (あの約束はもうなかったことになったのだとばかり) 『まぁ、行くか行かないかもあんたの自由だけれど』 (そんなの行くに決まっているだろう) 例えちとせが来てくれなくてもいい。小ノ澤を使って復讐されたっていい。だけどちとせに逢えるかもしれないというチャンスが1%でもあれば僕はどんなことをしたって行くに決まっているのだった。
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