第十二章 始まりの一日

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【お話があります。少し早い時間ですが部活前に会えませんか?】 そんな文面のメールをもらった時から嫌な予感はしていたんだ。 「あっ」 「……」 指定されたのはあの公園のベンチだった。 「忍…」 「…ちとせ」 この場所でちとせから告白されて俺もそれを受けて告白して──キスしたのはまだほんの数日前のことだった。 「あの、ごめんね…忙しい時間に」 「…忙しくないよ。午後からの練習まではまだ随分時間、あるし」 「そっか…」 チラチラッと視線が合ったり外されたり、明らかに昨日の朝、別れた時とは態度が違っていた。 (…なんだかなぁ) 心の何処かでは期待していた。俺の知らない処で女になってしまったとはいえ、でもやっぱり俺を選んでくれるのだろうと── 「あの…昨日はごめんなさい…練習観に行くっていってたのに…」 「うん…」 「部活の後、デートするって…いっていたのに…」 「うん…」 「約束……すっぽかして…本当に……」 「……」 言葉を重ねる毎にちとせの声は小さくなり、そして伏し目がちな瞳からはボロボロと涙が零れて落ちた。
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