第十二章 始まりの一日

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──忍に別れを告げるために呼び出した思い出の公園で思いがけない展開を迎えていた。 私は忍に申し訳ない気持ちで謝るしかないと思っていたのに、忍の方はそんな私を怒るどころかこうなることを予感していたのだといった。 その経緯を訊けば訊くほどに忍のあり得ない程の勘の鋭さ、女の子の気持ちに敏感なところなど、妙に恋愛慣れしているところが目について思わず例の噂の真相が知りたくなった。 「忍が中途半端な時期に転校したのも…その…前の学校で先輩を妊娠させたからとか…凄い数の女の子と付き合っていたりとか…」 「…はぁ、まさかちとせまで本気にしていないよな、そんな阿呆らしい噂」 「して、ないけど……でも忍って妙に恋愛慣れしているっていうか…堂々としているっていうか…」 「それは環境のせいだよ」 「え」 「その前に転校の件だけど、俺の転校理由は単に親父の転勤に伴うものだよ。親父、警察官なんだよ」 「え…!」 「春からの赴任だけどその時期って引っ越しシーズンで色々なことが混むだろう?それを避けるために前倒してとりあえず父親を除く家族だけは先に赴任先に引っ越して来たってだけだし」 「……」 「女問題だって俺、姉二人と妹三人姉妹の中の男ひとりで、姉妹の友だちと連れだって遊んだりしていたら自然とハーレム状態になっていたってだけで、そんなやましい関係じゃないし。…まぁ…たまに告白されて付き合ったこともあったけどそんなに長続きしなかったし」 「どうして」 「どうしてって…どれもこれもノリだったんだよ。友だちの弟や兄って立場の男が物珍しい年頃でどれも真剣じゃなかったってだけで」 「……」 「そういうのに振り回されていたら自然と女心っていうか…そういう恋愛事に関して詳しい──とまではいわないけど、色々先手を考えることに慣れてしまったんだ」 「…そうだったんだ」 (そっか…そういう環境だったら納得、かも) 見かけに寄らず恋愛に慣れている感はそこから醸し出したものなのだと思ったら自然とホッとしていた。
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