第十二章 始まりの一日

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「お待たせしました」 「いいよいいよ、それより大丈夫?ちぃちゃん」 「はい。ご心配かけました」 「ううん、冴ちゃんの大切な友だちはオレにとっても大切な友だちだからね」 「…優しいなぁ…サムさん」 「ふふ、ありがとう。そこら辺、冴ちゃんに大袈裟にアピールしておいてね」 「はい」 公園脇に停められていた車に乗り込むと緩やかに発車した。車を運転しているのは冴ちゃんの彼氏の東雲勇さん。『サムって呼んでね』といわれたからそう呼んでいる。 忍と話をして来るといった私に冴ちゃんは彼氏のサムさんを呼び出し、待ち合わせ場所まで連れて行くように車を出させた。 初めて見たサムさんは女の人かと思いドキッとした。だけどそれは女装趣味なだけで中身は正真正銘男性なのだと紹介された。 男性だけど女装姿のサムさんは何処からどう見て女性そのものでとても綺麗な人だった。 「えっと、これからショッピングだったね」 「え」 「あれ、冴ちゃんから訊いていない?これから全身コーディネートするって頼まれていたんだけど」 「え、えっ…」 「だって初めて好きな人とのデートなんでしょう?」 「!!」 サムさんのからかいに一瞬にして真っ赤になった。 (デ…デデ…デート…かぁ) 武流くんとプラネタリウムに行く約束。冴ちゃんに頼んで待っていると伝言してもらったけれど…… (武流くん…来てくれるかな…)
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