第十二章 始まりの一日

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携帯で時間を確認すると約束の時間15分前だった。 (ちょっと早く来すぎちゃったかな…) 風でヒラッと翻ったスカートの裾を気にしながら歩いていた歩幅は思っていた以上に大きかったようだ。 プラネタリウムがある敷地内の緑地公園に入ってからより一層胸がドキドキしていた。 (武流くん、来ているかな) 武流くんから誘ってもらったプラネタリウム。小学校の社会科見学以来の場所で懐かしいという気持ちと── (………はぁ) 武流くんとはあの日以来初めて顔を合わせる。どんな顔をして逢えばいいのか戸惑っている。 (でも…来てくれるかどうか…) 黙ったまま、何もいわずに武流くんの家を飛び出した。怒っているかも知れない──そんな気持ちがほんの少し歩幅を小さくした。 『大丈夫だよ、もう絶対ちぃの怖がることはしないから安心して逢っておいで』 私からの伝言を伝えに武流くんに会った冴ちゃんはそういってにっこり笑っていた。その言葉を受けて少しだけ勇気が出たのだけれど。
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