第十二章 始まりの一日

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(…それにしてもこの服) デート用コーディネートだといって今着ている服を選んでくれた冴ちゃんとサムさん。 それはまるでお姫様がお忍びで街に遊びに来ているような可愛らしいワンピース。華美ではない細かなレース使いがおとぎ話に出て来る女の子が着ている洋服を思い浮かべさせた。 (あんまり着たことがない服だからちょっと慣れないけど) 冴ちゃんが絶対にこれがいいといって譲らなかったお墨付きだ。 (うん…頑張ろう!) グッと拳を握って決意を新たにしていると 「ひとりかな」 「んな訳ないじゃない?」 (…ん?) 気が付けばちらほらと何人かの女の子のグループが点在していてヒソヒソ話しているのが聞こえた。 「モデル?なんか撮影とかしているのかな?」 「えぇ~お近づきになりたいんだけどぉ」 「こっそり写メ撮ったらダメかな」 (ま、まさか…) この見慣れた風景。小さい時から何度も見て来たこの光景に胸が高鳴る。 (これって…これって) 遅い速度で歩んでいた私の目はなんの迷いもなく噂されているその人の姿を捉えた。
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