第十二章 始まりの一日

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と同時に 「──あ」 「!」 視線が絡みつくように交わった瞬間 「……ちぃ」 「~~~」 プラネタリウム入り口前の大きな楠の木の前に立っていた武流くんが私を見つけた瞬間、駆け寄って来た。 「……」 私のすぐ前に立つ武流くんと何故か視線が合わせられなかった。 (え…えっ…?) どうしてだかカァと恥ずかしさが込み上げて来て、心臓が物凄い勢いで鼓動を打っていた。 (や…なんか…く、苦しい) 「…ちぃ」 (ふぁ…!) 武流くんの声を間近で訊いただけで気が遠くなりそうだった。 (わ、わた……私っ) 武流くんに対して今まで感じたことのないモーレツなときめきに戸惑った。 こんな……姿を見ただけで……声を訊いただけで…… (胸が潰されそうなくらいにドキドキしているなんて!) 「ちぃ…あの…ぼ、僕…」 「い、行こうっ」 「え」 「中、入ろう!」 「……」 私はまともに武流くんを見ること無く、そそくさとプラネタリウムの中に入って行った。 そのほんの少し後を武流くんがついて来る気配を感じながらなんとか顔の熱を冷まさないと必死だった。 ──まさかこれほどまでだったとは思わなかった (私…こんなに武流くんのことが……) 気持ちを自覚してから初めて目の当たりにした武流くんに感じた気持ちを受けて、私は本当に武流くんが好きで好きで仕方がなかったんだなと改めて確信したのだった。
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