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「…ねぇ、武流くん」
「……」
「ほらぁ、教科書なんて仕舞って?こっちに来てよぉ」
「……」
ベッドの上に座って少しずつ胸元を開けている彼女を見て(またか)とため息が出た。
確か試験勉強がしたいから家に来て──という誘いだったはずなのに、これはどう考えても勉強目的の誘いではないだろう。
「竹内さん」
「ん、なぁに?」
「勉強しないなら僕は帰らせてもらうよ」
「えぇっ、冗談でしょう?!…それとも、そういう焦らしプレイ?」
「……」
「武流くんだって最初からこういうことが目的で付き合ってくれたんでしょう?」
「……」
「わたしね、武流くんのことがずっと好きだったの。でも武流くんは泉水さんと付き合っているって噂があって…だから告白なんて出来なかったんだけど…」
「……」
「でも今日ね、勇気を出して泉水さんに直接訊いたの。『武流くんと付き合っているの?』って。そうしたら違うっていって…これはもうチャンスだって思うでしょう?」
「……」
(泉水のやつ…なに勝手に否定しているんだよ)
噂は噂のままにしていればいいものを──と思ったけれど、こういう状況になった今では何もかも遅い。
「ねぇ、いいでしょう?わたし武流くんと付き合えるならなんでもするわ!わたしには武流くんしかいないって思っているの!」
「……」
「それに…武流くんだって結構遊んでいるんでしょう?そんなにカッコいいんだから当然だと思うけ──」
バンッ!
「!」
思いっきりテーブルに教科書を叩きつけた。その破裂音と僕の蔑んだ視線で彼女は一瞬で青ざめた。
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