第七章 焦燥感と爽快感

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一旦はちとせの幸せのためにこの気持ちを封印しようとした。ちとせが幸せになるならそれ以上の喜びはないだろうと思った。 ──いいや、思い込もうと……した だけど実際ちとせが片想いを実らせ晴れて好きな男と付き合いだしたという事実を知った時、僕の中には今まで押し込めて来た様々な感情が吹き出そうとしていた。 それを必死に抑えるためにもなるべくちとせとは接触しないようにして来たけれどそんな小細工が何処まで通用するのか。 もう既にちとせ不足で気が狂いそうだった。何かちょっとした衝撃で爆発しそうな勢いのものが僕の中には充満していた。 (これは…思っていた以上に厄介だ) 「武流くん?どうしたの」 「…いや、別に──」 ピリリリリリリ いきなり鳴った携帯の着信音にドキッとした。 (これは) 相手別に着信音を変えていた。音で誰からの着信が解るようにしていて、すぐに出なくてもいい相手からの電話には出ないことにしていたのだが。 僕は素早く携帯を手にして電話に出た。 「もしもし」 電話口から聞こえる声に色々複雑な想いが込み上げて来た。
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