第八章 初体験

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簡単な朝食を作って忍と一緒に食べた。 「バス、20分後に来るから」 「ん、分かった」 「ねぇ、午後から練習、見に行ってもいいかな」 「いいけど…体、大丈夫?」 「大丈夫って?」 「その……昨日、全部は挿入れてないけど……痛くない?」 「! あっ…ぁ、う、うん、大丈夫!」 何のことをいっているのか分からなかったけれど忍がそこまでいって思い当った。 (…本当のこというと少しだけズキズキしているけど…我慢出来ない痛みじゃないし) そんなところまで気を使ってくれる忍の優しさに心が温かくなる。 「大丈夫だったら来てくれると嬉しい」 「うん、行くね」 「じゃあ帰り、何処か寄り道しようか?」 「え」 「放課後デート…じゃないけど、えっと…部活後デート?何処か遊びに行こう」 「本当?」 「うん。俺、私服持って行くから途中で着替えて…あ、なるべく遅くならないようにするから」 「嬉しい!しよう、デート」 「よし、決定」 「……」 嬉し過ぎてドキドキした。土日に部活があるからまともに遊べないと覚悟していたけれど、上手く時間をやりくりすれば一緒にいられるのだと思うと嬉しくて堪らなかった。 (忍、デートだっていってくれた) それだけで私は幸せを感じてならなかった。そしてそんな幸せの中、私はひとつの決意をしていた。 (私…今日こそは頑張りたい) 昨夜のことがどうしても頭から離れない。私がもっと我慢して頑張れば忍と繋がることが出来たかも知れないという後悔。 もっと……もっと頑張れたかも知れない。 忍のことが好きだったらどんなに痛みを伴っても受け入れることが出来たんじゃないかという想い。 (リベンジしたい) そんな私の決意を忍は知らない。あえて伝えるつもりもないけれど、今日こそは私が忍を幸せな気持ちにしたいなと強く思ったのだった。
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