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「さ、冴ちゃ…」
「あいつはね、ずっとちぃのことが好きだった」
「……」
「驚かないね、いわれた?」
「…それ、らしいことは…」
「多分、ちぃにいったことは全部あいつの本音だよ」
「…え」
「あいつはね、ちぃのことが好きで好きで…昔から今もちぃ一筋なの」
「そ、そんな…そんなこと…全然…」
分からなかった。だってそんな素振りも言葉も態度も一切なくて……
(ただ武流くんは私を手のかかる幼馴染みのひとりとして構ってくれているとばかり)
「いえなかったんだよ。だってちぃの好きなタイプは亡くなったお父さんみたいに大きくてガッシリした人だったから」
(あっ…!)
「小さい時からそれをあいつは知っていたから告白なんて出来なかった」
「……」
「仮に告白して──受け入れてもらえなかったら?それこそ今までの関係まで崩れてしまう。あいつはそれを酷く恐れていた」
(わ…私が…武流くんの気持ちを表に出させないようにしていた?)
「だ…だって…た、武流くんは…王子様、で…」
「ちぃ?」
「好きに…好きになっても…私とじゃ…ダメだって…」
「……」
自然と涙がボロボロと零れた。
「わた…私、私だって…初めて逢った時から武流くんのことが好きだった」
「!」
「だけど、だけど王子様はお姫様と…お姫様じゃないと結ばれちゃダメなんだって…思っていたから…」
「……」
「王子様には…武流くんには…冴ちゃんがいた、から…っ」
「え」
「お姫様の冴ちゃんが…いたから、私は…」
「ちぃ…それって」
冴ちゃんが酷く動揺した。真実を初めて知ったような狼狽振りでそれを見て私はずっとずっと溜まっていた醜くてドロドロした感情をそのまま冴ちゃんにぶつけてしまった。
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