第二章 お姫様の秘密

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わたしが他の女の子と何処かが違うと感じたのは物心ついた頃からだった。 「ねぇ、冴ちゃんって随分おとなしい子ね」 「あらそう?子どもってこんな感じじゃないの」 「ん~普通知らない人に抱かれたら泣きそうなものだけど」 「赤ん坊の頃から色んな人に抱かれているから免疫ついているんじゃないかしら」 「そういうものなのかな…でも本当可愛い顔しているわね。流石あなたの子ね」 「ふふっ、ありがとう」 最初にある記憶は母の友人がわたしを見に遊びに来た時の記憶だった。その友人は元モデルの母とは違って素朴な可愛らしさのある人だった。 彼女の胸に抱かれると母とは違った自然ないい香りが鼻孔をくすぐりとても安心した記憶があった。 わたしの母は読者モデルからファッションモデルにのし上がった人で兎に角自分自身の美貌にかけることに関しては物凄い執念があった。 人から訊いた話では、母は生んだばかりのわたしに胸の形が崩れるからという理由で母乳を飲ませるのを拒否したらしい。しかも腕に余分な筋肉がつくのを嫌ってわたしを抱くこともなかったそうだ。 産後まもなく母はわたしを自分の実家に預けて仕事復帰した。しかしほんの数年でモデルとしての仕事は激減していった。 そんな母のために実業家である父は母名義のモデル育成教室を開かせた。教室は都会ではなく母が生まれ育った地元のこの町に開いた。 それは都会では掃いて捨てる程いる美しい人の中にいるよりも田舎の小さな町の方が母のその美貌がより一層際立つと考えたからに過ぎない。 「先生、冴ちゃん、また可愛くなりましたね!子役で売り出したりとか考えていないんですか?」 「考えていないわ。ただ可愛いだけじゃ通用する幅は限られて来るし、どうせならもう少し娘らしくなってからの方が色々使い道があると思うから」 「使い道って…先生、自分の娘に酷い言い様」 母の教室に通う人、勤める人、その全てが女の人だった。 こんな狭い町の中でも色んな女の人がいて、同じ女の人でもわたしは【好きな人】と【嫌いな人】を無意識に区別していた。
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