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「柊はあいつ、俺たちは俺たちだ。お前はあのえりとか言う女に啖呵を切るくらいやっている方がちょうどいいんだよ」
「えっ?!」
文目は思わず声を上げた。「あの時、楠さん、やっぱり見ていたんですか?」
自分がえりに「私が何を占ってほしいか、見てわからないの?」と無理難題なことを言われて、「教えて下さらないと言うのであれば、私は占いません」と語彙を強めて言い返した時。
楠(その時は柊だと思っていた)が階段から降りてきたが、楠はやはり自分とえりがやり合っているところを見ていたということなのだろうか。
「見てたさ。さすがの俺も階段降りるの気まずかったな、あれ。
それにしても、あのえりとか言う女、まだ柊の講座を受けてるんだよな。柊もあの女のこと何とも思ってないところ、相変わらずさすがだとしか言えないよ」
「やっぱり、柊さんはあの人のこと、特に迷惑とか感じていないんですね……」
楠は柊と身体を共有しているだけあって、柊があのえりという女性をどう思っているかもわかるということなのだろうか。
(――だとしたら)
文目の心にある考えが浮かんだ。
だとしたら、楠は柊があの琴子に対して、本当に鋭い質問をしてビックリしたという以外の感情を持ち合わせていないということも知っているのだろうか。
そして、柊が自分のことをどう思っているかということも、知っているのだろうか……。
やっぱり、柊が自分のことをどう思っているかは気になる、と文目は思った。
柊の態度は誰に対しても平等だ。文目に接する時も、あのえりと言う女性と接する時も、琴子と接する時も一緒だ。
もっと言えば、銀葉館に時々やってくる宅配便のお兄さんや銀葉館のお手伝いをやってくれている女に対しても全て一緒だ。
ただ、平等だからこそ、文目には柊が何を考えているのか読めないようなところもある。
(――でも、いくら柊さんの意識が寝ているとは言っても、そんなこと、楠さんには訊きにくい)
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