男は世界とクロスする

10/111
前へ
/118ページ
次へ
民衆は唄う。 絶対の王の名を。 民衆は叫ぶ。 雄大なる王の名を。 民衆は讃える。 武勇伝尽きぬ王の名を。 『雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!雷帝!』 雷帝は腕を広げ静粛の意を表すと同時に民衆は静まった。ヤトラはマイクスタンドを雷帝の前に設置する。雷帝が言葉を発しようとした時、落雷が民衆を襲う。だが悲鳴は聞こえない。正確にひとりの男を撃ち抜き即死させると雷帝は民衆に向けて指を指す。くいっと上に上げる動作をするとひとりの男が浮いていく。男はじたばたと暴れ周りながら何かを叫んでいる。 「くそ!離せ!離しやがれ!」 男は雷帝を鋭く睨みつけるも当然意味をなさない。ただ指で指されただけで胸ぐらを掴まれているわけでも釣り天井というわけでもない。ただ磁界に干渉して男を磁力の力で浮かせているだけの子供でも知っている雷帝の能力だ。雷帝は男の右腕を正確に落雷で撃ち抜くと男は叫び声を上げる。その叫びがさらに民衆を駆り立てていた。再び繰り返される雷帝コール。 「お前、名前は?」 その言葉が発せられた瞬間、雷帝コールは静まる。男は片腕の付け根を抑え今なおとめどなく溢れる血を止めようと必死になりながら雷帝の質問に答える。 「俺はラルート!お前に殺されたスモアの恋人だ!」 「ラルート、スモア…あぁ、あの女。ルールを破った女だな?」 男の憤りはさらに膨れ上がる。 「ルール!?あれがルールだ!?ふざけるな!ただ貧困の差を無くそうとしただけだろうが!なのに、なんでお前は!!」
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加