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男の言葉が止まる。それを叫ぶか迷った。愛する人の最期の姿。それを思い出してしまうからだ。だがそれを避けては雷帝に何も言えない。この馬鹿げた王に騙され続けている民衆の目を覚まさせる事はできない。男がそれを口にしようとした時、雷帝が口を開いた。
「お前の彼女、スモアにしたこと。あれは罰だよ。彼女は私の定めたルールを曲げようとした。そういえばお前たちは外から来た人間だったな。定住を許したのもお前たちが幸せであればいいと思ってのことだ。だがここのルールは守らなければならない。絶対でなければならないのだ。何故だかわかるか?ん?」
「わかるかよ!人の命を簡単に奪えるルールなんてわからねぇ!」
男はぐぃぃと雷帝の前まで移動させられ、雷帝の前に無造作に置かれた。目に見えない拘束から男は解き放たれる。目の前には玉座に座る雷帝。絶対的な力はあるが15の女だ。人生経験なら10年も上。今ならこいつを殴れる。殺す事は無理でもあのクソみたいな面に1発叩き込める。なのに体は恐怖で動かない。
「どうした?殴らないのか?なら、おい」
雷帝の合図で男に剣が渡される。
「ふむ、王を打つ剣とでも言おうか?今からお前は英雄だぞ?私の首を撥ねてみろ」
ざわざわと民衆は騒つく。男はおそらくこれが最期のチャンスであることを理解する。自分の首を撥ねろと命令した王に後悔させるチャンス。男は剣を手に取り鞘から刀身を抜き出す。ギラリと光る両刃の剣は雷帝の首にかけられる。このまま引き抜けば終わる。この憎しみも何もかも全てが終わる。恐らくこの後殺されるだろうがそれでいい。スモアの仇を取れるなら死んでもいい!
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