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「私は…間違っているか?」
ヤトラは雷帝に駆け寄り、片膝を立て忠誠心をあらわにして、
「雷帝しゃま。発言許されたし」
「ならん。私が聞いているのはこいつだ。下がれ」
雷帝の言葉でヤトラは苦虫を噛み潰したような表情で元いた場所へ戻る。雷帝は男の発言を待っていた。しかし一向に何も言わない男に対して雷帝は席を立ち、マイクスタンドの前へ歩く。
「我が大いなる絶対都市オーティムの民よ!今せっかくの機会だ。我が真意を話そうか。私はこの都市を作ったとき、ルールの下でこそ平和は訪れると思っていた。だから私はこの力を持ちながらもルールに従って生きることを決めた。そしてそれを強いることで永遠の平和を願った。もちろん反発する者も出て来た。その度に制止、殺し、見せつけ、ルールという名の暴力で私は君たちを押さえつけて来たわけだ。私はそのことに対して何も悪いとも誤ったとも思っていない。私はお前たちの命などどうでもいいのだ。こうして群れているのは他人を救っているというエゴからだ。私は私の力で他人を生かしているということに達成感や幸福感を得る人間ということだ。だから私はこれからもルールを変えるつもりはないし、お前たちにルールを強いる。そしてこれに対してだ。一度だけここを出る権利を与えよう。明日正午までに出る人間はここを出よ。また、明日の正午民衆を集める。以上だ」
雷帝のその言葉で締めくくられた。雷帝は客用の部屋に男を連れていくようにヤトラに言うとそう言えばと尋ねる。
「あいつはどうなった?」
今なお雷帝の発言に困惑しているヤトラに変わり、お世話係のチョモスと呼ばれる老人が答える。チョモスは執事服に身を包み雷帝にタオルを渡しながら昼間にあった少年について話した。
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