0人が本棚に入れています
本棚に追加
事細かに家や路地、働いている人間の名前等が何ページにも渡って書かれている。
「北区20世帯、東区15世帯、南区35世帯、西区10世帯。1世帯あたり4人計算で合計320人が主要可能です」
「…まぁ、増えたな」
「ですな」
「よし。リュリューシュケル渓谷、落としに行くか」
「本気で?本気でそうおっしゃっているのですか?リュリューシュケル渓谷!あそこは未曾有の大災害以降、精霊の力が宿ったと言われる渓谷!あそこに住む人間たちは精霊と契約を交わしエキナ達を迎撃しつつ生活圏を確保していると言うではありませんか。10の王冠第8冠『契約』の霊王が居る。だから精霊と縁の繋がりがあるのかもしれないですが」
そう。リュリューシュケル渓谷はここ、オーティム同様世界を牛耳る10人のうちの1人、霊王が仕切っている。だが性格は温厚であまり戦争したがらないとの話もある。この世界に国境はない。10人が自分が見れる範囲内だけを国として治めているだけに過ぎないのだ。だからこそ、安寧の地は重要で貴重だ。それと同時に人手もやはり貴重である。土地の開発だけなら5年や10年あれば事足りる。だが専門的な知識を持った人間を育てるとなると20年から30年はかかる。だから確保できる人間は確保しておきたい。まぁ、時たまに戯れであの男の子のようにしてしまうのは悪い癖だが。
「チョモス。今回はお前に行ってもらおうかな?」
「了解しました」
「人数を必要なだけ言え。用意してやる」
「いえいえ、老いぼれには指揮なぞ務まりますまい。私1人で十分でございます」
「そうか」
雷帝は嬉しそうに笑った。
最初のコメントを投稿しよう!