男は世界とクロスする

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幹部達は一応雷帝の代わりに慣れるほどの実力者揃いだ。いつ寝首をかかれてもおかしくはない。だがそれを大人しくさせているのは副統括理事長ヤトラの存在だ。だからか彼女だけが雷帝の心の安らぎになっている。雷帝はベッド脇に備え付けられたボタンを押す。数秒後、扉が開きヤトラが現れる。 「何事でしゅかー?」 「いや、ただ呼んだだけだ」 「いつものことでしゅがあまりむやみやたらに押さないでくれましゅ?」 「そう連れないことを言うな。何か見つかったか?」 「はいはい、それのことで〜、はい」 ヤトラはリストを渡す。そこに書かれていたのはオーティム周辺の地図だった。円形の壁に阻まれたオーティムの周りには崩壊した街がぐるりと囲んでいる。ここを開拓していきさらに生活圏を広げたいのだが、人が集まるに比例してエキナ達が集まってきているためうまく進んでいないのだ。どこから湧いてくるのか、どうして作られているのかわかれば対策のしようもあるし、こちらから攻めて確実に減らしていくこともできるが、移動できる距離や外に出ていける時間には限度があるためうまく探索が出来ていない。部下達を向かわせたこともあったがあまりいい成果はあげられていないのだ。だがそれでも危険地帯と呼べる場所の把握は次第に出来ていた。チョモスに命じたリュリューシュケル渓谷もその1つである。霊王が治めていると言う地域だがその規模は小さい。何せ渓谷だ。広大な土地とは違い谷間というのは隠れることには特筆できるが開拓するのは難しい。故に最小限で落としたい。ここを手に入れられれば渓谷側からとオーティム側からで開拓は進めることができる。 「雷帝様もチョモスさん一人で行かしぇるなんて人が悪い。可哀想でしゅよ?」 「はは、それはチョモスがか?」 「しょれもありますが、あのご老人。敵に回した人はご愁傷様でしゅかね〜」
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