男は世界とクロスする

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………。誰か、いないのか?俺の名前は…。今は…どこにいるかよくわからない。空を行き交うアイツらを避けて来たから。行くあてのない旅だ。これが人生とか冗談にもならない。ああ、母のアップルパイが恋しい。話が逸れたな。とにかくだ。誰か。誰か居たら返事をくれ。誰か、居ないのか?本当に、世界は終わっちまったのか?それを確かめたい。誰か…頼むから返事をくれ。俺が生きてるんだ。だからみんな生きてるだろ?どっかで震えて。ガタガタとさ。物音立てずに縮こまってるだけだろ?誰か居たら合図を。本当に、頼むから。そう願うのも億劫になるから。 すると俺の目の前に1つの炎が燃え上がる。幾千万と光る星空の下にその炎星は俺を指し示した。燃える。燃え盛る炎は俺を包み込み全身を焼いた。意識は薄れていく。これが死か。世界の反応を望んだ結果、死が訪れるのならば仕方ない。反応がなかったこの流れに終止符を打つことができた。自分で死ぬこともできず、終わらせることのできなかったこの時間を止めることができたのだから良かったと思う。そうだ。これでよかった。 遠のいていく意識の中、彼女は手を差し伸べた。
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