男は世界とクロスする

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その何かの攻撃を避け、彼女のもとへ駆ける。攻撃があたるギリギリで扉に飛び込みその攻撃で土煙が舞う。知らない女の子に口を手で塞がれ息を殺すと見失ったのか何かはしばらくあたりを彷徨った後、何処へとともなく姿を消した。 「はぁ、はぁ、助かった。ありがとう」 彼女にお礼を言うと鬼の形相でこちらを睨みつけグーで右頬を殴られる。俺の体は女の握力だと言うのに吹っ飛んだ。 「いてっ!何すんだ!?」 殴られた頬をさすりながら彼女に問いかけると呆れたようにため息をつく。確実に距離を取り明らかな警戒心を剥き出しにまるで今からとって食われるかのような空気感を放ってきた。それにはライオンを前にしたウサギのように震えるしか無い。実際は震えてはいなかったのだがとにかく無事ではすまないような張りつめた空気が彼女から発せられていた。 「お前、何故あそこにいた?」 質問に対して新たな質問をぶつけてくるという斬新な彼女に俺はそう言えばなんであの場所にいたのかと記憶を探る。だが理由は見つかることはない。わけのわからないままに世界は変わっていたのだ。 「俺にもよくわからないんだが。名前すら思い出せないんだ。ここはどこだ?」 「……ここの地名はもう無い。10年前は大国の州の1つの名前があったらしいが今はロスト・ガイアと呼ばれている地名の地区2-5だ。それ以外に呼び方はない。雷帝と呼ばれる奴がこの辺一帯を仕切っているからお前みたいに不用心な奴はすぐに奴隷にされるんだが見たところ逃げてきたわけでも無いらしいな。私はオーティム。お前は記憶喪失みたいな発言をしたが…名前がないんじゃ呼びにくいな。ん〜、なんて呼ぼうか?」 名前なんてどうでもいいだろうが、そんなに必要なことなのか?それよりも今はこの日常からかけ離れた状況の説明の方が重要な気がする。 「そんなことよりも俺のいた場所と違うし、普通の景色じゃない気がするし、それにさっきのやつはなんだ?殺されそうになったんだがもしかして雷帝ってやつの手下かなんか?」
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