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オーティムはそれから今の世界の実情を話してくれた。この世界では10の王冠と呼ばれる力で王に成り上がった人間が10人いること、その10人によって今の世界は統治されていること。エキナに対抗するために精霊と呼ばれる未知の力を借りる者、魔法を使うことができる人間の出現等、やはり何を聞いても元の世界とは異なる世界なのでは?と思うような情報ばかりが飛び出してくる。そして、
「あらかたのことは教えた。あとは自力で生きろ。じゃあな」
オーティムはさっさと歩いていってしまう。後を付いて行こうかと思ったが彼女がよくしてくれたことに対して裏切りはしたく無いという思いから教えられた道を進む。しばらく歩くと光が見えてきた。恐る恐るその出口に向かうと目の前に広がっていたのは空一面を覆い尽くすエキナの大群。カロが後戻りしようとした時、洞窟の天井が爆発して崩れ落ちる。道が断たれ、その音に反応してエキナたちはカロを標的に定めた。エキナたちは矢を精製し、それらを一斉に放つ。右肩と左脇腹に1発ずつ、カロは左腕で頭をガードしながら走る。くそ!なんだこれは!あぁ、そうだあいつに騙された。信じてたのにこれが今の世界のあり方なのか?くそくそくそ!くそったれが!
「あがっ!」
矢が左の太ももを貫く。カロはその場にコケるように倒れこんだ。ゆらゆらと蠢くエキナたちを睨みつける。そうだ。今思えば不自然だった。こんなに大量にいるはずのこいつらが目が覚めた所に一体しかいないのはなぜだ?こいつらはこんなにも正確に撃ってくるのに妙に射撃がズレていたのは?そして都合よく真正面に逃げ込めるような配置は?
「あのヤロウ、あいつがここを仕切ってるって奴か!」
カロはオーティムと名乗る女の正体と、このエキナの大群たちのど真ん中に放ったことの意味を考える。いや、それよりも、そんな事は一旦置いておいて、
「こんな所で、くたばれるかぁ!」
カロの咆哮がこだました。
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