「兄編 プロローグ」

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「兄編 プロローグ」

 物心ついた頃から、僕はこのお店が大好きだった。  扉を開ければ芳ばしい香りが鼻をくすぐり、席からは楽しげな話し声がする。初めて訪れても、ああ懐かしいな、と思わずつぶやいてしまう。  『カフェYASAKA』。  ある時は安らぎの場所。またある時はドラマが生まれる場所。  ここを作ったおじいちゃんはもういないけど、変わらないものだってある。彼の思い出は形を成して、また新しい日常を育むゆりかごになったんだ。  これはとある兄姉弟妹の、兄の物語。
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