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「まあ、私は草太の応援だけどね。春香は誰の応援してるんだっけ?」
「ちょ・・・楓!」
慌てる春香。こういう時の楓は結構エスだ。
「イイよ。行くよ」
口角をキュっと上げたあの笑顔で、カナタは言った。心地良い、穏やかな声。
「本当? 来てくれる?」
春香の顔が華やいだ。何だか、嬉しそうに笑っている春香の様子を見て、カナタもつられて笑った。
長いまつげ、少し吊り上がった眉毛、そして、首筋に向かって絞り込まれたショートボブは、ハツラツとした春香に良く似合っている。
身長は152センチ。以前、草太と澤村と、身長の話になった時にそう言っていた。クラスでは割と小柄なほうだ。いつも楽しそうに笑っている春香を、カナタはちょっとイイなって思う。実際、春香は割と男子に人気があった。
だから、そんな美園が澤村に付き合って試合を見に来てくれるのも、学際のライブに誘われるのも正直ちょっと嬉しい。
「じゃあ俺、行くわ」
ハンバーガーセットとカレーをすっかり完食したカナタが席を立つ。今日は、注文していたバッシュを1階のBRICK-SPORTSに取りに行く日だ。
「また明日」
春香が言う。
「うん。明日」
カナタが応える。
「じゃあな」
と草太。
「おう」
そう言ってスポーツバッグを持ち上げ、カナタはフードコートを後にした。
楓が草太の袖を引っ張って聞いた。
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