あれから2年、パドックでは

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あれから2年、パドックでは

 さて、1990年に時計の針を戻そう。  中山競馬場は、彼の最後の雄姿を見ようとスタンドは超満員に膨れ上がり、思うように身動きが取れないほどの混雑であった。  パドックに表示されている、出馬表を見てみることにしよう。 1枠1番(65.1倍) オースミシャダイ 牡5 松永昌博 1枠2番(12.0倍) ヤエノムテキ 牡6 岡部幸雄 2枠3番(11.8倍) オサイチジョージ 牡5 丸山勝秀 2枠4番(32.9倍) ランニングフリー 牡8 菅原泰夫 3枠5番(4.7倍) メジロライアン 牡4 横山典弘 3枠6番(79.7倍) サンドピアリス 牝5 岸滋彦 4枠7番(4.2倍) メジロアルダン 牡6 河内洋 4枠8番(5.5倍) オグリキャップ 牡6 武豊 5枠9番(41.5倍) キョウエイタップ 牝4 柴田善臣 5枠10番(74.7倍) ミスターシクレノン 牡6 松永幹夫 6枠11番(25.2倍) リアルバースデー 牡5 大崎昭一 6枠12番(133.4倍) エイシンサニー 牝4 田島良保 7枠13番(3.3倍) ホワイトストーン 牡4 柴田政人 7枠14番(16.2倍) ゴーサイン 牡4 南井克巳 8枠15番(42.3倍) カチウマホーク 牡5 的場均 8枠16番(77.3倍) ラケットボール 牡6 酒井千明  1番人気はジャパンカップで日本馬最先着(4着)のホワイトストーン、2番人気は秋の天皇賞2着のメジロアルダン、3番人気はこの年のクラシックで善戦が続いたメジロライアン、オグリキャップはこれに続く4番人気。  5番人気は1990年の宝塚記念オサイチジョージ、オグリと同期の皐月賞馬ヤエノムテキがこれに続いている。  決して弱くは無いが、幾多のライバルを相手に死闘を演じてきた彼にとっては、少々物足りないメンバーとなっていた。  この年のクラシックを制覇した三頭、ハクタイセイ(皐月賞)は故障が癒えず、メジロマックイーン(菊花賞)は、有馬記念を同じオーナーのメジロライアンに取らせたいという陣営の意向で出走回避、アイネスフウジン(ダービー)は脚部不安を発症してすでに引退と、いずれも出ていないことも物足りなさに拍車をかけていた。  しかし、オグリキャップの調子は良くないように思えた。武豊はこの時、勝てるとは思っていなかったが、ファン投票では1位で選出させているのだから、せめて見せ場だけでもつくってやりたいと考えていた。  人気薄の伏兵、ミスターシクレノンが逃げて、オサイチジョージがそれに続く。レースはスローペースで流れていくはずだ。そうなってくれれば今のオグリキャップでも上位進出は可能だろう。  外目でレースを進め、4コーナーまでには前に出て。と、レースをシミュレーションしていた。  もっともオグリキャップの全盛期であれば、どんなペースになっても勝てるはずなのだが……、1989年から1990年春にかけての歩みを振り返ってみよう。
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