出会

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 翌日。沙耶は昨日の玲奈の事を友人である、相川結衣に話す。  結衣と沙耶の出会いは、沙耶がまだ入学したばかりのころ、知り合いが誰もいなく、一人でいたところを、隣の席になった結衣が話しかけてきたことがきっかけ。桜華学園は、その学校に通う生徒のほとんどは、幼少期から自宅での令嬢としての教養、社交界での作法等の教育を受けているため、おしとやかな性格の生徒が多い。  その中で結衣は言ってしまえばかなり大雑把な性格。結衣の実家は、大手の貿易商を営んでいる。彼女の両親は、放任主義な性格のため、結衣のやりたいことを好きなだけやらせる教育方針の用で、自由に育っていた。そのため、彼女は学校のほとんどの人と知り合いになっている。  結衣は、沙耶にとって一番の友達だ。 「え!それマジ!?」  結衣の突然の大声に声に周りの生徒が思わず反応し、二人の方を見る。 「結衣ちゃん。声が大きいよ」 「ごめんごめん。で、それほんと?」 「うん、昨日偶然ね」 「まじかー。私も見たかったなー」 「もう、結衣ちゃんはいつもいつも……」 「当然でしょ。そんな面白いこと」  結衣は何か面白いことがあるとすぐに首を突っ込みたがる。そのため、いろいろなことを知っている。学園の生徒も、結衣が首を突っ込むことは暗黙の了解となっている。 「ねえ。結衣ちゃん?女の子同士ってさ……よくあるの?」  沙耶は高等部からの編入組のため知らない事であったが、桜華学園に通う生徒の中には、卒業と同時に結婚する生徒もいる。これから先の自由を縛られるとでもいうのだろうか、この学園にいる間に、自由に恋愛をしたいと思う生徒は多い。しかし、男性との出会いは親戚を除くとほとんどいないのが現状。  それなら女の子と……そう思う生徒は多い。  結果、女性同士で付き合っている生徒はかなりの数になり、異性と付き合っている方が珍しいとさえいえる。実は、高校からの編入の中には、そのことを知っていて入学する生徒もいたりする。 「特に玲奈様はいろんな娘と付き合ってるみたい。まあ、どれも長続きしないみたいなんだけどね。1日で別れた娘もいるって話だし……」  と話をしていると、クラスメイトの話声が一瞬やんだかと思うと、すぐにざわざわとした雰囲気に変わっている。教室に入ってくるのは話題にしていた佐伯玲奈その人。  彼女を見た生徒は、女神を見ているかのようにその美貌に心を奪われ、彼女を見て失神してしまう生徒も出ていた。それくらい、彼女は周りを惹きつける魅力がある。  しかし、ここで疑問がひとつ。3年生である彼女がなぜ、この教室に来たのだろうか。彼女にはここに来る理由はないはずだ。ゆったりとした足取りで教室に入ってきた生徒は、やがてある生徒の前で立ち止まる。 「……七瀬沙耶さんね?」 沙耶の目の前で。玲奈は沙耶に用があった。何故……沙耶と玲奈は今日初めてこうして話をした。玲奈は沙耶をじっと瞳を見る。玲奈に見つめられた沙耶はその透き通るようなその輝きに惹きつけられて体が思うように動かなかった。それは、玲奈が教室を出るまでの時間。一瞬の出来事のはずが、とても長く感じられた。沙耶は、自分が言葉を発したかどうかすらもわからなかった。ただ1つ分かったことがある。 「放課後、生徒会室まで来てもらえる?話があるから」 昨日見ていたことに、気付いていたんだろう……彼女は。
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