交錯

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交錯

「それで、昨日、玲奈様となんかあった?」  今日の沙耶は朝から憂鬱であり、気を抜けば溜息をついているような様子。沙耶は昨日の事を改めて思い出す。  あの時、確かに玲奈は沙耶にキスをした。唇同士が確かに触れ合った。それからの事はよく覚えていない。多分何もなかったはず……。それすらもうろ覚えなのである。沙耶は無意識に自信の唇に触れる。まだ玲奈としたときのあの柔らかい唇の感触。柔らかさ、自身の唇にほのかに温かさが残っているのではないかと一瞬錯覚をしてしまう。 「あー。うん。何となくわかったわ。お疲れ」 「別に何もなかったんだってば!!」 「はいはい。分かったから。そんなに必死になると、何かあったって言ってるようなもんだから」  結衣はこういった色恋沙汰など、面白いと思ったことに関する勘は驚くほど鋭い。なんでこういうことだけ……彼女の事を知る者は皆一度はこう思う。最も、沙耶の表情や姿から、何かあったのを察するのは、そう難しいことではなかったかもしれないが。  迎えた朝のHRの時間。担任の先生はいつものように教室に入ってきて、今日の連絡事項を伝える。今日もいつも通りの学校生活が始まる……そのはずだった。先生の話を聞くまでは。
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