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交錯(2)
資料室。学園の旧棟の一番奥にあるその部屋には学園での過去の活動記録をはじめ、年度予算や会議の議事録等が保管されている。ここ数年に関しては重要な書類を除いでほとんどはデータ化しているが、創立当初の記録なども存在している。それらの資料は当時のまま保管されているため、資料の状態から歴史を感じさせるものである。その資料室に沙耶と副会長を務めている山王美穂がいる。
「こんな場所があったんですね」
「ここは教師もほとんど利用しませんからね。知ってるのは生徒会と一部の教師くらいです」
「それで、私は何を手伝えば……」
「ここには創立当初からの資料がすべて保管されています。その数は膨大になっており、過去の資料を探すのにも手間がかかっている状態です。そこで生徒会は、生徒会活動と並行して過去の資料をデータに直して整理していってます。七瀬さんには私が指示しますので街頭の資料を探してほしいのです」
「大変そうですね……分かりました」
何故二人がここにいるのか……。
時間は少しさかのぼり、生徒会室に入る沙耶。中には玲奈と美穂の姿が。
「こちらは副会長の山王美穂。七瀬さんには美穂の仕事を手伝ってもらいたいの」
「副会長の山王美穂です。よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします……」
沙耶は棚から資料を探しては順次美穂に渡している。美穂は手元の資料を見ながら、パソコンに向かいデータに入力している。沙耶は美穂を見ながら昨日の事を思い返す。
昨日、玲奈に迫られ、あと少しで玲奈とキスする寸前に生徒会室に入って来たのは美穂だったのだ。美穂は二人の状況を見るも、何かリアクションを見せることもなく、玲奈に次の会議で使うデータを渡すとそのまま部屋を後にしたのだ。部屋に残された二人だったが、玲奈が「続きする?」と言ってくるも沙耶は恥ずかしくなり、帰ってしまう。
そのこともあり、実は美穂と二人きりは気まずかったりする沙耶だが、他にも沙耶は、美穂と玲奈の関係について気になっていることがあったのだ。
「あの……」
「どうしました?何かわからない事でも?」
「そうじゃなくて……美穂先輩と玲奈様って……付き合っているんですか?」
あの日……沙耶が見た玲奈が生徒とキスをしているところ。
その時玲奈がキスしていた相手は……美穂。
美穂はそれを聞いて作業していた手を止める。
「付き合ってる……私が……ですか」
「見たんです……この前二人が……キス、してるの……」
「そういうことですか……別に付き合ってないですよ」
「え?そうなんですか?付き合ってないのにキスを」
「何度も言ってるんですけどね。それでもたまにああしてくるんですよねあの人……まあ、理由は何となく分かるから強く言えないんですけど……っと話過ぎましたね。早く今日の分を終わらせてしまいましょうか」
美穂は再びパソコンに向かい作業を続ける。つられて沙耶も、棚から資料を探すも、玲奈と美穂の関係が気になっている。
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