176人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
*
「おい、神楽、どこに行くんだ」
夏休み明け早々の学校で、俺は神楽の背を追いかけていた。
神楽が俺について来いと言ったからだ。なのに、その本人はそれ以上何も言わずに、俺を何処かへと連れて行く。
「おい、神楽」
「……」
「…おい、何も言わないならついて行かないぞ」
「…やれやれ」
やれやれと言いたいのはこっちだっつの。
神楽は階段を上がりながら言う。
「とある人物に呼び出されたのさ。拓美ではなく、オレがね」
「は?それって…お前のことを知ってる人物なのか?」
それは誰だ?拓美の体の中に存在する幸尋のことをきちんと知っているのは、今のところ俺とリーダーしかいないはず。
やがて屋上の扉の前にまで来てしまい、神楽は躊躇うことなく開けた。
びゅうっと風が吹く。
「拓美から何も聞いてない?」
「…?」
俺を見た神楽が妖しい笑みを浮かべる。
俺と神楽は屋上に出た。
そこには、すでに誰かがいた。
フェンスの近くに、学ラン姿の男子生徒が背を向けて立っていた。
男子生徒が振り返る。
黒髪に眼鏡をかけた、小綺麗な顔をした少年だ。
男子生徒はにこりと笑顔を浮かべる。
その視線は神楽の方をじっと見つめていた。
「呼び出してしまってすみません。あれ、友達ですか?まぁいいか、彼も写真部の部員ですよね」
最初のコメントを投稿しよう!