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妹探し 上
***〈石見弦.side〉
2年前に、両親を不慮の事故で亡くした。
それがきっかけとなり、俺の生まれ故郷であるこの村に、弟たちと引っ越して来て早一年が経つ。
両親が残してくれた立派な日本家屋の書斎で、俺は今夜も一人で仕事をしていた。
今年の夏も、この町で行われる祭りの準備は始まっていた。
奥村神社の本殿に続く長い参道には出店が並び、御神灯の文字の提灯が無数に吊るされ、夜になるとあかりを灯す。
目を閉じれば子供の頃の記憶が蘇る。両親と一緒に出店を周り、最後に神楽舞を見た。
踊り手が舞う神楽舞に俺は心を奪われた。
この舞の時間がいつまでも続けばいいのにと、思ったことは覚えている。
その時、母親が俺に教えてくれた。
踊り手が『宝探し』という神楽を舞う時間、失ったものを求めると、それは必ず見つかるのだと。
あの時の俺は、何を求めようとしただろうか。
もう、思い出せない…
「ーー兄貴?」
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