不思議な金の破魔矢

わたしは、西田陸くんと付き合ってます

と、言うか今度、初めてのデートが実現するの

あまり、人混みが好きではないわたしなんだけど陸くんから初詣に行こうって言われたからイヤとは言えなかったというか

混んでるから迷子にならないようにいきなり手繋ぎデートになるんじゃないかと思って今からドキドキしてるの

行き先は鎌倉の鶴岡八幡宮だから鎌倉駅で待ち合わせをしたんだけど会えるか不安だった

と、いうのも携帯を忘れてきちゃったの・・が～ん
痛恨の極み！

でも改札口が約束の場所だったから何とかすごい人混みの中、陸くんと会うことができた

良かった～
携帯忘れたなら、僕から離れないでよ
迷子になったら大変だからさ

と、言われ可愛く頷いたら陸くんは予定通り？手を繋いでくれた、嬉しい！

横何列にもなって進んでいて対向の流れもまた、何列にもなって流れて来ていて

わたしは一番端で対向の流れの接点を歩いていたんだけど急に対向の列の男の人から金色の破魔矢を押し付けられるように渡されてビックリしている間にドンドンわたしもその人も流されて行っちゃったの

えーーって思っている間に

なんでわたしに渡したの？

背の高い男の人だったとしか覚えてないよ

陸くんに言ったんだけどそこらへんに捨てるのもバチあたりな気もするよね
しばらく持ってなよと言われて、お守りやお札を買った時の手提げ袋に入れて持ち歩いてたの

そのまま初詣デートをしてからおいしいランチを食べたり鎌倉の大仏に行って大仏様の中に入ったりなんかして楽しく過ごしたの

夜は食事をしてから家まで送ってくれて

別れ際、陸くんが抱きしめてくれて、ちょこんとキスしてくれた

楽しかったよって

うつむいて、ありがとうって言うのが精一杯だった

あの、例の金の破魔矢を持ってきてしまったことをやっと思い出したわたし

経緯を説明したらお母さんがそのまま飾っておけばいいじゃないのと言うもんだからそうすることにした

ベッドで、あー、ステキな一日だったなぁ～って思い出し笑いをしたりなんかしてるうちに寝ちゃったみたい

その夜、わたしは不思議な夢をみたの

背後が光っていて、シルエットだけ浮かび上がるような感じで立っている男の人

やっと会えたねって言ってたの

わたしが、だれ？と聞いたら

今に会えるからと言っただけだった

それから何回も同じ夢をみたんだけど一度も顔は分からなかった

なー、なんだろう？と気にはなっていたけど陸くんが好きだし～まっ、いいっかみたいな感じだった

それからも度々、夢は見ていたけどこの間はいつもと違う展開が

その夢の中の男の人が
もうすぐぼくが君の近くに行くから待っててと言うの

わたしには、陸くんがいるから来られても困る

と、言ったら
彼は本当に君のことだけみているのかと言うから

当たり前でしょ！と怒りつつショックを受けたところで目が覚めたの

なんだか、いやにその言葉が引っかかって

次にデートに行った時に
陸くんがトイレに行った隙に悪いのを承知で携帯を見ちゃったら

なんと、他の女の子ともデートに行っていた証拠のラインを見つけちゃった

ショックで逃げるようにその場から離れた

あの夢の男の人は知らせてくれたのかな？
それとも偶然かな？

結局、陸くんとは別れた

ショックで部屋に引きこもっていたらまた、夢にあの男の人が出てきて

泣かないで、僕が行くから
と言っていた

わたしは令和になったことだし前を向いてポジティブにならなきゃと自分に言い聞かせてた

あの、夢の男の人のことは不思議だったけど半信半疑だった

ある日、何となく一人、鶴岡八幡宮に行きたくなって出かけてみたの

季節的に空いていたからお賽銭を入れてゆっくりお祈りできた

ふと見ると隣に男の人がやっぱりゆっくりお願い事をしているのが目に入ったけど気にもとめなかった

わたしが、少し先に終わって歩き出したらその男の人が後から追いかけて来て声をかけて来たの

あのぉ、すみません
いきなりだけど僕とあなたどこかで会っていませんか？

えっ？

知りませんけど

いきなり変なコトを言うヤツだと思いますよね
でもナンパなんかじゃないですから

もしかして、夢を見たりしていませんか？

夢？

夢！

僕、初詣に来て知らない女の人に金の破魔矢を渡されたんですよ

え！？

わたしも初詣に来て知らない男の人に金の破魔矢を渡されたんです

えっ、あなたも？

何となく今日、一人で来たくなって来てみたんです
あなたを見た瞬間にシンパシーを感じたんです

えっ

少し話しませんかと言われて、あの夢のワケが、わかるかも知れないと思ってカフェに行くことにした

話してみたら、とても初めて会ったとは思えないほど盛り上がって楽しくて楽しくて

彼が言うには、鶴岡八幡宮には、金の破魔矢なんてないんだって言うの

二人して誰かから渡された破魔矢が不思議だった

それから彼と、お付き合いするようになっていったの

ふと、家に飾ってあった破魔矢を見たら、金から普通の破魔矢になっていたのに気がついてとってもびっくりした

本当に不思議だったけど神様がわたしと彼を引き会わせてくれたんだと思った

彼のことを、大事にしてステキな家庭を作りますよ

そう、結婚することになったの

神様がついているんだもんシアワセになるね