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高倉 麻友
都心から離れた静かな住宅街に立つこのコンビニで、高倉麻友はアルバイトをしていた。平日の学校終わりに3日ほどと、土日のお昼に入る事が多かった。
客層は朝と夕方の学生に近隣の住民という具合で、正直言って忙しいお店ではない。
「麻友ちゃん15分休憩行ってきていいよ」
「はい! 休憩頂きます」
一緒にシフトに入っていた遠藤さんに挨拶をしてから、バックルームへと向かう。遠藤さんはこのコンビニを支えているベテランクルーの主婦である。
麻友はバックルームへ入るが思わず足を止めてしまった。それはパソコンの前で最近来たばかりの新しい店長が、熊のように身体を丸めていたからだ。
とはいえ何も言わず休憩するわけにもいかないので、仕方なくその丸い背中に声を投げかける。
「お、お疲れ様です」
しかしこの新しい店長ときたら麻友に身体を向けることもなく「はぁい」という、弱々しい声が返ってくるだけだった。
麻友はなるべく音をたてないよう、従業員用の椅子にゆっくりと腰を下ろした。鞄からチョコレートを取り出し、ひとかけら口に運ぶ。
バックルームには、監視カメラの映像音と店長の不規則なマウスのカチカチ音が響く。
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